インカートクッキングシステムによる嚥下困難者食調理の可能性の検討

目的 :病院食や介護食の配膳用フードカート。そこに自動調理機能を付加したのが、鯖江の漆器メーカーが開発した「インカートクッキングシステム」です。このシステムを活かして、介護食を安全で衛生的・簡易的に提供する可能性を探るため、アンケート班と調理班に分かれてゼミ生全員で取り組みました。

調査 :福井と石川の44の病院や介護施設に、介護食についてのアンケートを実施。インカートを導入すれば介護食調理の種々の問題を解決できるか、その糸口を探りました。介護食は調理後にミキサーにかける手間などがかかり、また衛生面でも不安、との意見の一方で、見た目や味付けを課題と捉える声がより多く、予想とは違いました。

実験 :介護食をインカートでつくると、加熱前に食材をミキサーにかけるので加熱後は手を触れることなく衛生的です。また、少人数分だとどうしても味が薄くなりがちな煮込み料理も、インカートなら個別の専用食器内で調理するので一定の水分量でも焦げつかず美味しくできました。このように調理実験でインカートのメリットが見えてきました。

結論 :本研究の目的だった、嚥下困難者食の調理の可能性は実証することができました。まだ改善点はあるものの、現場の声をもとに献立も今後増やしていけば、介護食への応用も広がるだろうとの結論に至りました。ゼミ生全員で意見を出し合い、理解と一体感が深まる研究になったと感じています。


内川 侑香/大戸 優希子/岸本 えんじゅ/下島 七星大滝 彩夏/猪嶋 幸/出倉 愛実/清水 莉歩 2019年3月卒業

産学協同の研究成果を活かして、配膳効率化と人材ニーズの拡大へ。
インカートクッキングシステムを開発した下村漆器店と協力し、このゼミで研究に取り組むのは今年で4年目。人手不足がいわれる給食現場でインカートは人材面や衛生面でもメリットが多く、全国的に注目度が増し、問い合わせが来ています。今後は、インカートが使える管理栄養士として、ゼミ卒業生の人材ニーズも高まることが期待されます。健康栄養学科では全学年を対象にセミナーなども行っており、インカートの可能性を広げるゼミ研究と共に、現場ニーズに応える人材育成に取り組んでいます。

指導教員 樽井 雅彦 教授